狛江の古民家「むいから民家園(狛江市立古民家園)」見どころ紹介
2021/03/08
むいから民家園(狛江市立古民家園)は、江戸時代から明治時代にかけて現在の狛江市内に存在していた古民家を移築して展示している野外博物館。園内では、狛江市の指定文化財となっている「旧荒井家住宅主屋」「旧髙木家長屋門」を見学することができます。
今回はそんな「むいから民家園(狛江市立古民家園)」の見どころを紹介したいと思います。
なんと入園料が無料!
入口の左手にある管理棟「むいから村役場」で受付をしてから園内を見学します。受付では、代表者が名前、住所、連絡先を記入します。
管理棟の前には、懐かしい感じの赤い丸ポスト。古民家とまではいかないまでも木造平屋の建物がいい味を出しています。
さっそく旧荒井家住宅主屋を見学
管理棟の正面向かいに建つ茅葺屋根の建物がこの民家園のメイン「旧荒井家住宅主屋」。
軒下が薪置き場になっていて、大量の薪が積まれています。
「薪多過ぎ!」と思いましたが、昔は軒下に薪を沢山積んで長い冬に備えたそうで、ひと冬でこのくらいの量は普通に使ってたみたいです。
このあたりでは茅よりも安価だった麦藁を屋根葺きに用いていたそうです。
その「麦藁(むぎがら)」のことをこのあたりの方言で「むいから」と言っていたことが、狛江市立古民家園の愛称「むいから民家園」の由来になります。
さっそく古民家(旧荒井家住宅主屋)の中に入ってみたいと思います。入口右手には、昔の農機具のようなものが置かれています。
入口から入ると中は土間になっていて、左手奥には座敷、その奥には奥座敷が続いています。土間から座敷へは、ここで靴を脱いであがります。
入口から入って右手には、木臼が置かれています。
木臼といえば餅つきを思い浮かびますが、餅は江戸時代でもお祝いの食べ物だったみたいで、お正月の準備でも餅つきは欠かせない行事だったそうです。
土間には、かまどが三基設置されています。
薪を燃やした熱で調理するという構造上、煙や火災のリスクを考えるとこの位置にあるべきだったんだと思いますが、現在のコンロや炊飯器にあたるかまどが、部屋の外にあると少々不便そうにも感じます。
かまどの上部の柱には、火の災いを除けるためにかまどの神様が祀られています。座敷の神棚とは別に神棚が設けられています。
土間の一番奥には、流しのようなものが設置されています。
現在でいうところのキッチン。明治以降に水道が設置される前は、流しの右の水瓶に汲んできた水を貯めておいて、洗い物をしていたのでしょう。
土間の流し側からは、お茶の間にあがれます。板張りのお茶の間の中央には囲炉裏が見えます。
お茶の間へは、ここで靴を脱いであがりましょう。
囲炉裏を囲んで暖をとったり食事をとったりして、家族団らんのひとときを過ごしたのでしょう。
囲炉裏からは流しや土間のかまどが見渡せます。意外と炊事場への導線も悪くないように思えてきます。
目線を上に向けると、緻密に組まれた屋根組みと、それを支える大きな梁を見る事ができます。
続いて座敷にあがります。
手前の座敷は10畳、奥の座敷が8畳ほど。畳の部屋に入ると大の字になって天井を仰ぎたくなります。
ちなみに畳は江戸時代の中頃に町民の家を中心に普及しますが、農村まで普及したのは明治に入ってからのことなんだそうです。
座敷には神棚が祀られています。
各部屋は引き戸で仕切られています。家族みんなで仲良く暮らしていたんですね。
奥の座敷には床の間があって、生け花が飾られています。
床の間といえば掛け軸が掛かっているイメージもありますが、農村の床の間となるとちょっと違うのかも知れません。
奥の座敷からは庭がのぞめます。2面を縁側と接していてなんとも解放的な空間です。
座敷を出て南側の縁側に腰掛けます。
ぽっかぽかで気持ちいい!暖かな日差しに春の訪れを感じます。縁側でゆったりとスローライフを楽しむ暮らしもいいですね。
ゆっくりと流れる時間。ここが東京である事を忘れてしまいそうになります。
西側の縁側もイイ感じ!
休日の昼下がりに縁側で読書なんてのにも憧れます。
土間の奥にある勝手口から建物の裏手に出てみました。
流しの排水は外部に流されています。
裏手には北向きの縁側。こちら側には庇(ひさし)がついています。
南側と真っすぐ繋がっているので、夏は風の通り道になって涼しそう。
お昼を過ぎると西向きの縁側にもおひさまの光が届きます。
どこに腰掛けても暖かな日差しが気持ちいい時間帯です。
やはり南向きの縁側の規模が一番大きい。この長さの縁側で雑巾掛けレースをしたら白熱したバトルになりそう。
「旧荒井家住宅主屋」をひととおり満喫したので、次は「旧髙木家長屋門」の方に行って見たいと思います。
旧髙木家長屋門
もうひとつの狛江市指定文化財「旧髙木家長屋門」。
長屋門は、武家の屋敷門の両側を部屋にして家臣や使用人の居住として利用していたもので、裕福な農家でも長屋門が建てられました。農村では、使用人の住居の他、納屋や作業場としても利用されていました。
門の内側からみて右側の部屋は、中を見学する事ができます。
長屋門の部屋の中の床は板張りになっていて、機織り機が置かれています。
門の外側からを眺めると、改めて立派な門だなと感じます。奥には「旧荒井家住宅主屋」が見えます。
案内版に、茅葺の形状を模した銅板葺きに整備したと書かれていたので調べてみると、茅葺き屋根の葺き替え費用は1,500~2,000万円ほどになってしまうのに対して銅板葺きなら半分くらいで済むみたいです。
茅葺き屋根は維持するのも大変なんですね。
竹で作られた物干し竿。古民家の庭に良く合うデザインです。
古民家園内の庭
園内の庭には井戸もあります。
井戸に設置されている手押しポンプは江戸時代に使われていたものではなく、昭和に入ってから普及したものになります。
園を訪れた人の多くが、池の中には何か生き物がいるのかな?と水の中を覗き込みます。メダカサイズの小さな魚が泳いでいるのを確認できました。
ベンチも設置されているのでのんびりできます。庭も日当たりが良くて気持ちいい!散歩するだけでも十分に気分転換になります。
令和2年には、かつて多摩川の観光で実際に使用されていた屋形船が展示されています。水深が浅い多摩川に合わせて平らに作られた船底が特徴です。
屋形船の横にある漁舟こは、伝統的な木造の和船で、多摩川で鮎などの漁にしようされていたそうです。
むいから民家園(狛江市立古民家園)
江戸から明治にかけて、江戸・東京近郊の農村だった狛江の暮らしを今に伝える「むいから民家園(狛江市立古民家園)」。
実際に昔の建物や道具に触れながら昔の暮らしを想像するのはとても面白い。縁側に腰掛けて庭を眺めながら春のやわらかな日差しを感じるだけでも、ゆったりとした昔の農村を体験できた気がします。
入園料も無料なので、近くに住んでいる方にはお散歩コースとしてもオススメです。
- むいから民家園(狛江市立古民家園)
- 住所:東京都狛江市元和泉2-15-5
- 休園日:水・木曜(祝祭日の場合は翌開園日)
- 開園時間:9:30~16:30(7,8月は~18:00)
- 駐車場:無