一切経山登山!駐車場から初心者向けの定番コースを写真付きで紹介
2024/10/23
福島県の絶景登山スポットとして知られる一切経山。一切経山は、吾妻連峰(通称:吾妻山)を構成する代表的な山のひとつで、山頂からは吾妻小富士や魔女の瞳(五色沼)、磐梯山、福島市内を一望することができる。
今回は、初めて登山に挑戦する方でも安心して楽しめる、浄土平ビジターセンターから山頂までの定番コースを、登山初心者の方が迷わないよう、駐車場から登山口、コースのポイント、そして山頂からの絶景まで、たくさんの写真とともに解説しながら紹介したいと思う。
浄土平駐車場からいよいよスタート。
ここにはかなりの台数が停められる広い駐車スペースが用意されているが、行楽シーズンということもあり、日の出の時間帯にはすでに満車状態。
早朝にもかかわらず、第二駐車場方面には車の列ができており、一切経山の人気の高さがうかがえる。
まずは浄土平ビジターセンターに立ち寄って登山の準備を整えたいところだが、開館時間は朝9時から。そのため、今回は開館前に登山をスタートすることにした。
ビジターセンターの玄関前には、登山届提出用のポストが設置されており、ポストの下の段には登山者用の記入用紙が用意されている。登山計画書は、もしもの時のために提出しておくのが安心だ。
今回は、浄土平ビジターセンターからスタートして、まずは浄土平湿原を経由して酸ヶ平へ向かい、その後一切経山の山頂を目指すルートで登っていきたいと思う。
ビジターセンターの窓には、登山道の方向を示す矢印が掲示されており、建物に沿って進むことで、迷うことなく登山道の入口を見つけることができた。
浄土平登山口から浄土平湿原
浄土平の登山道入口に到着。
一切経山をはじめ、鎌沼や東吾妻山方面へ向かうすべてのルートがここから始まる。
登山道に足を踏み入れると、前方には浄土平湿原が広がる。この湿原エリアには木道が整備されていて、登山者だけでなく、観光客も気軽に散策を楽しむことができる。
標高1,600mという高地に位置しているため、5月から9月にかけては高山植物を観察することができる。
さらに、道中には各所に解説板が設置されており、湿原の自然や植生について学ぶことができるほか、一部区間はバリアフリー化されており、車イスの利用も可能なエリアが設けられている。
木道を進み、浄土平湿原をさらに奥へと足を運ぶ。
視界に飛び込んでくるのは、一切経山の中腹にある大穴火口から立ち上る噴気。遠くからでもしっかりと確認できるその光景が、まさにこの山が活火山であることを改めて実感させられる。
浄土平湿原から酸ヶ平分岐
浄土平湿原の木道が終わって周囲の景色が変わると、ここまで散策気分だったものが本格的な登山の雰囲気へとシフトする。 登山届提出用のポストを目にすると気持ちが引き締まり、これからの登山に向けた緊張感が高まる。
登山道は徐々に傾斜がつき、足元に注意しながら少しずつ進んでいく。
ほどなくして、分岐点が目の前に現れる。
この分岐点では、2つのルートが選べる。
左の道は鎌沼の南側に位置する姥ヶ原方面へ向かうルートで、景色を楽しみながらのんびり進むことができるコース。
右の道は鎌沼の北側を通り、酸ヶ平方面に向かう最短ルートで、どちらのルートを選んでも最終的に一切経山の山頂にたどり着くことができる。
今回は、右側のルートを選び、一気に一切経山の山頂を目指すことにした。これからどんな景色が待っているのか、期待を胸に歩みを進める。
登山道から一切経山の中腹に位置する大穴火口が見えてくる。山の中腹から白い噴気が立ち上っており、活火山の姿を間近に感じる。
少し開けた場所に出たので、ここでひと息つくことにした。大穴火口の噴気が先ほどよりも近く感じられる。
振り返ってみると、スタート地点である浄土平駐車場や浄土平ビジターセンターが見える。隣に見える吾妻小富士とはほぼ同じ高さに感じられる。
登山道は徐々に険しくなる。遠く高い場所に登山者の列が続くのが見える。
岩に書かれた"○"印を時折見かける。登山者が迷わないようにするための道案内の目印になっているのだろう。
登山道の両側にはロープが張られていて、登山者が道を外れないようにしっかりと整備されている。
ただひたすらのぼりが続く。
険しいのぼり道が続く中、一切経山の茶色い山肌が時折顔を出す。
"○"印を横目に確認しつつ前へ進む。
大穴火口からの噴気はさらに近づき、少しずつのぼって来ていることを実感させてくれる。
行楽シーズンということもあって登山客が多いので、道に迷うことはなさそうだ。
一切経山登山道の紅葉が見頃を迎えており、少し早めの秋の訪れを感じさせてくれる。
少し前まで自分と同じ高さに感じていた吾妻小富士が、いつの間にか下に見えるようになったことで、どれだけ登ってきたのかを確認することができた。
のぼり道が途切れることなく続くので、少し脇に外れてひと休み。上着を脱いで温度調整したり、こまめに水分を補給することが大切だ。
松の木が生い茂るエリアまでのぼってくると、もう間もなく酸ヶ平。
ここまで続いた長いのぼり道がようやく終わり、少しほっとすると同時に、次のエリアに進んだという実感がじわじわと湧いてくる。
そして、酸ヶ平(すがだいら)に到着!
ここまでの登山道とはまったく異なる景色が広がっている。周囲は紅葉に染まり始めた広々とした草原が広がって、開放感を感じさせてくれる。
酸ヶ平分岐が見えてきた。
分岐点にはベンチが設置されており、一息つけるようになっている。
さっそくベンチに腰を下ろし、穏やかな雰囲気に包まれながら少し休憩をとることができた。
酸ヶ平分岐の道標には、鎌沼まで約0.4km(約10分)、一切経山頂まで約1.2km(約40分)と記されていた。
酸ヶ平周辺はすっかり秋色に染まっている。
ちなみにここまでの道のりは登山道入口から約40分ほど。次の目的地である一切経山の山頂を目指して再び歩き始める。
酸ヶ平分岐から一切経山山頂
酸ヶ平分岐から一切経山方面へと歩を進める。
熊笹が生い茂る登山道を進む。
熊笹ゾーンの先に、酸ヶ平避難小屋が見えてくる。登山者が緊急時に身を寄せるための避難小屋となるが、公衆トイレも併設されている。山中の貴重な設備を維持するためにも、使用した際はチップの協力を忘れずに。
酸ヶ平避難小屋を過ぎると、道は一旦下り坂になる。ここから登山道を歩く登山者たちの姿が遠くまで続いて見えるので、おおよそのルートを把握することができた。
下りきったところで、目の前にはV字谷のような沢が現れ、再び登りが始まる。
このV字谷の右側をゆっくりと進んでいくと、道は再び急な登りへと変わる。ここからは、大小さまざまな岩がゴロゴロと散らばった険しいのぼり坂が続く。
傾斜がきつい場所も多く足元が不安定な箇所もあるため、無理をせずにジグザグにルートを取りながら進んでいくと良いだろう。
足元に注意しつつも、時折振り返ってみてほしい。背後には、息をのむような絶景が広がっている。酸ヶ平の奥には鎌沼が姿を見せ、登山の疲れを一瞬忘れさせるほどの景観だ。
疲れを感じたら、景色を眺めながら少し休憩を挟むのも良いだろう。
ゴロゴロ岩の急なのぼり坂も、ようやく終わりが見えてきた。
ここまで登ってくると、目の前に一切経山の山頂を確認することができるようになる。
目指すゴールが見えると自然と足取りも軽くなる。前方に続く登山者たちの列に合わせて、ひたすら山頂へ向かって進んでいく。
しかし、山頂まではまだ油断できない。足元はザレ道が続き、滑りやすい箇所が多いので慎重に歩みを進めたい。特に下山時が滑りやすくバランスを崩しやすいので要注意だ。
道の両脇にはロープが張られているため、ここまで登ってくれば、もう道に迷う心配はないだろう。
周囲には大小の岩が散在し、その上に腰をかけて休憩する登山者の姿も見かける。
登山者たちの列は山頂まで続いている。
最後のラストスパートが近づいてきた。
山頂はもう目の前だ!
一切経山山頂のみどころ
一切経山の山頂にようやく到着。
浄土平登山道入口から山頂までの所要時間は約80分。途中の酸ヶ平分岐からは約40分だった。
何か存在感のある積み石(ケルン)に近寄ってみる。標柱には空気大感謝塔の文字が書かれている。
山頂の中央付近には、一切経山の標柱をバックに記念撮影をするための行列ができていた。
せっかくの機会なので、その行列の後ろに並ぶことにした。
心地よい疲れとともにたどり着いた山頂。達成感が漂う。目の前には福島盆地が広がる。標高1948.8mからの眺望は圧巻で、福島盆地が盆地であることが確認できるほど広く見渡すことができる。
ズームしてよく見ると、福島駅周辺の市街地や東北新幹線の高架がはっきりと確認できる。また、福島市のシンボルとして親しまれている信夫山の姿も見つけることができた。
一切経山山頂からは、すぐ近くにある「吾妻小富士」の火口を見下ろすことができる。
火口の独特な景観に目を奪われ、ズームしてよく見ると、御鉢参りをしている登山者たちの姿が確認できた。
そして、ここ一切経山の山頂のみどころの一つで何よりも印象的なのは「魔女の瞳(五色沼)」だ。
山の中に鮮やかに広がるコバルトブルーの湖面は、その美しさで訪れる人々の心を一瞬で奪ってしまう。周囲の雄大な自然と、魔女の瞳の青さのコントラストは、まさに一見の価値がある絶景だ。
視線を反対側に移すと、東吾妻山の優雅な姿が広がり、そのさらに奥には福島を代表する名峰「磐梯山」をのぞむことができる。東吾妻山は標高1,974.7mで、福島市内の最高地点となっている。
磐梯山に視線をズームしてみると、標高1,816.2mのあの磐梯山が下に見えることに驚かされる。
一切経山の山頂からは、吾妻小富士や魔女の瞳をはじめとする絶景を楽しむことができた。福島市内を一望できる標高1948.8mの大パノラマの絶景は、登山者にとって忘れられない体験となるだろう。
また、一切経山の山頂からは魔女の瞳や吾妻小富士をそれぞれ別角度から見下ろせる「家形山」や「駱駝山」へのアクセスが可能。さらに今回は、さらなる絶景を見にこれらの山にも足を延ばしてみたので、近日続編の公開にご期待ください。