
天ざる・天もり発祥の室町砂場!ざる・もりを打ち分ける江戸蕎麦老舗店
2024/09/01
天ざる・天もりの発祥として知られる江戸蕎麦の老舗店「室町砂場」さん。藪、更科と並んで江戸蕎麦の御三家に数えられる屋号「砂場」の流れを汲むお店で、その歴史と共に磨かれた伝統の味は、多くの蕎麦通たちを魅了してきた。
今回は、そんな「室町砂場日本橋本店」さんで、このお店の特徴である「ざる」と「もり」の打ち分けによる違いや魅力を確認しながら発祥の天ざる・天もりを味わって江戸の粋を楽しんでみたいと思う。

JR神田駅西口から徒歩約4~5分、JR新日本橋駅2番出口から徒歩約2分の場所にある。訪れたのは昼時を過ぎた14時頃だったが、それでもお店の前には行列ができており、人気ぶりが伺える。

頭上には「砂場」の文字が入った看板が堂々と掲げられている。古くから続く老舗ならではの歴史と伝統が、その看板からもひしひしと伝わってくる。

行列は店内に続いている。受付表に記名したり番号札を発券するようなシステムは特にない。シンプルに行列に並んで順番が来るのをじっと待つスタイルだ。

店内にはもう一枚扉がある。店内の長椅子まで進むことができれば、あとは席に案内されるのを待つだけだ。
「室町砂場日本橋本店」のメニュー

室町砂場日本橋本店さんの蕎麦メニューは、季節のおそば、冷たいおそば、温かいおそばにカテゴリー分けされている。その中で注目すべきは、発祥として知られる「天ざる」と「天もり」だろう。これらは、冷たいおそばのカテゴリーに位置づけられている。

卓上には、板わさをたのしむということで「鈴廣かまぼこの板わさ」が紹介されており、上質な味わいが期待できる。また、季節ごとの味覚が楽しめる「季節の品書き」も配置されており、その時期ならではの特別なメニューを楽しめるようになっている。

壁にもメニューが掛けられている。
季節の品書きに記載されていたメニューの他、焼鳥重、天とじ丼、親子丼などのご飯もののメニューもあるので、数量限定となっているが、そば屋のご飯ものを楽しむこともできるようだ。

メニューの一番最後のページには、砂場の由来が記されていた。
"砂場"というそば屋の屋号の由来は、大阪発祥と言われております。
大阪城築城・修復などの資材置き場としての砂場の近くに繁盛していた麺屋が俗称として呼ばれていたものが次第に屋号となったそうでございます。
後にのれん分けなどで江戸に伝わり、江戸の地で蕎麦文化の広がりと共に広がりました。
当店もそんな江戸に広まった古いいくつかの系統のうちの一つより、独立し、明治二年より、ここ日本橋にて営業を始め、創業の年としております。
※引用元:メニューより
- ▼「室町砂場日本橋本店」の主なメニュー
- ・別製ざる:880円(税込)
- ・もり:880円(税込)
- ・天ざる:2,090円(税込)
- ・天もり:2,090円(税込)
- ・かけそば:880円(税込)
- ・おかめそば:1,925円(税込)
- ・天ぷらそば:2,090円(税込)
- ・種込天ぷらそば:2,090円(税込)
- ・鈴廣かまぼこの板わさ:770円(税込)
室町砂場日本橋本店で蕎麦前

江戸から続く蕎麦前文化にならって蕎麦前を楽しむ。本当は日本酒をいただきたいが、初夏なので冷たいビールを注文。

蕎麦前の定番「板わさ」を注文。
室町砂場日本橋本店さんの板わさは、鈴廣かまぼこを使用した板わさが提供されている。かまぼこは、そのままでも十分においしいが、わさび醤油をつけることで、一瞬で絶品のおつまみへと早変わり。お酒がすすむこと間違いなしの一品だ。
室町砂場日本橋本店の「天ざる」「天もり」

発祥である「天ざる」「天もり」、打ち分けられた「ざる」「もり」それぞれを全て味わいたいと思う。天ざる・天もりは、天ぷらが入ったつけ汁で楽しむものだが、普通の麺つゆでもお蕎麦の味わいをしっかり感じたかったので、「ざる」と「天もり」を注文した。
これで、「天ざる」「天もり」「ざる」「もり」、すべての組み合わせを一度に楽しめることになる。
室町砂場日本橋本店の「天もり」「もり」

まずは「天もり」。
室町砂場さん発祥の天ざる・天もりは、メニューにも記されていたとおり、冷たいお蕎麦を天ぷら(かき揚げ)が入ったつけ汁につけていただく。
"天ざる""天もり"は当店発祥。
天ぷらそばを、暑い夏でも食べ易くと冷たいセイロでのつけ麺スタイルにしたのが始まりです。
※引用元:メニューより

「もり」は、挽きぐるみを使用したお蕎麦で、やや薄い灰色の色味がある。「ざる」と比べると、蕎麦の色がほんのりとくすんでいて、そば粉の粒が細かく混ざり合った見た目をしている。"天"で注文したお蕎麦は長方形のセイロに盛られるようだ。

「ざる」と比べると、蕎麦の色がほんのりとくすんでいて、そば粉の粒が細かく混ざり合った見た目をしている。お蕎麦が長いので、麺つゆまで運ぶのに手を高くあげる必要がある。

麺つゆは濃口で、お蕎麦をちょんとつけて口に運ぶと、しっとりとした旨味が広がる。濃口だが、キレが鋭いというよりも、後味にほんのり甘みが広がるような、柔らかい余韻を楽しめる仕上がりになっている。そして、それに絡むお蕎麦もまた、上品で優しい味わいだ。

続いて、天もりのかき揚げが浸かったつけ汁につけていただく。温かいつけ汁に浸かった天ぷらから溶け出した出汁の風味が、これまた違った味わいを演出している。

つけ汁に浮かぶかき揚げには、貝柱や海老が入っている。このかき揚げが繊細なお蕎麦と絶妙に合わさりいい仕事をしていた。
室町砂場日本橋本店の「天ざる」「ざる」

基本の麺つゆでもお蕎麦の味わいをしっかり感じたかったので、「ざる」をあわせて注文。ざるには、麺つゆと一緒に薬味の刻みネギがついてくる。

「ざる」は、さらしな粉を使用した純白のお蕎麦。"天"ではないお蕎麦は円形のセイロに盛られるようだ。

「もり」とは全く異なる見た目で、一般的にイメージする蕎麦とも違った真っ白なお蕎麦。真っ白な見た目ではあるが、うどんやそうめんともまた違う雰囲気を持つ。

濃口の麺つゆに、お蕎麦をちょんとつけて口に運ぶ。お蕎麦には心地よい弾力が感じられ、のど越しよく仕上がっており、さらしな粉特有の繊細な風味から上品さが際立つ。

続いて、かき揚げが浸かったつけ汁につけて、天ざるとしていただく。温かいつけ汁が、冷たいお蕎麦と絡み合い、また違った楽しみ方ができた。
これで「天ざる」「天もり」「ざる」「もり」のすべての組み合わせを体験することができた。個人的には天ぷらの旨味と挽きぐるみのお蕎麦が絶妙にマッチする「天ざる」と、繊細なさらしな粉のお蕎麦を基本の麺つゆで味わえる「もり」の組み合わせがベストだと感じた。

最後に、濃口の麺つゆにそば湯を注いで、食後のひとときをゆっくりと楽しむ。
じんわりと広がる余韻とともに、この贅沢な時間に感謝しながら、一杯のそば湯で締めくくるのは、江戸蕎麦ならではの楽しみだと思う。ごちそうさまでした。
「室町砂場日本橋本店」の店舗情報

今回訪れた天ざる・天もりの発祥店として知られる「室町砂場日本橋本店」さんは、江戸蕎麦の歴史と伝統を感じることができる老舗店だった。
特に、「ざる」「もり」の打ち分けられたお蕎麦は、それぞれ異なる風味と食感を楽しませてくれ、どちらも甲乙つけがたい逸品で、江戸の粋と老舗ならではの雰囲気を楽しみながら、江戸蕎麦を堪能することができた。お蕎麦好きの方はもちろん、江戸の文化に興味がある方にもぜひ訪れていただきたいお店だ。
- 「室町砂場日本橋本店」の店舗情報
- 住所:東京都中央区日本橋室町4-1-13
- TEL:03-3241-4038
- 営業時間:11:30~21:00 土~16:00
- 定休日:日祝
- 駐車場:無

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